ふたたび紀州街道にもどって、さらに南へ向かいましょう。阪堺電車の「御陵前」停りゅう所の手前を東にまがります。そこに見えてくるお寺は「南宗寺」です。
この寺は、堺の町をささえる戦国大名の三好長慶が父親三好元長を弔うために建てたお寺で、1557年に南宗寺としました。その後、この寺の住職だった沢庵和尚が、大坂夏の陣で焼けた南宗寺を1619年に再建しました。
この寺で有名なものに「枯山水」があります。禅宗のお寺には欠かせないのがこの枯山水で、南宗寺も禅宗なので枯山水がつくられています。下の写真がそれです。
一番奥を山として滝が流れ、上流から下流へとしだいに川はばが広がってきます。そして最後は海に流れこんでいきます。途中には岩があったり、舟がうかんでいたりします。水をまったく使わずに、全てを石で表わしているのです。
おかれた岩は時には島に見えることがあるかもしれません。見る人の心一つで何にも見えるのだそうです。第二次世界大戦でこの庭も一度は焼けてしまいましたが、かろうじて残された石組をほり出して、現在の枯山水を復元されたのです。
見る人の心といえば、もう一つ、「八方にらみの龍」が天井にえがかれている仏殿が、このお寺にはあります。天井を見上げてみると、この龍はどこから見ても、見ている人をにらんで見えるところから、このように呼ばれているのです。何か自分の心に悪い部分をもっていると、この龍はにらみ返してくるように見えるのかもしれません。
さて、もう一つ実相庵とう茶室があります。この茶室は、塩穴寺にあった千利休のつくった茶室を明治時代に南宗寺に移したものです。ただ、この茶室は第二次世界大戦で焼かれたので戦後建てなおされたものなのが残念です。