19 大安寺だいあんじ

大安寺本堂

 前回の南宗寺なんしゅうじから少し東へ行くと、大安寺に出ます。この寺の本堂ほんどう総檜造そうひのきづくりというとてもぜいたくなて方をしています。本堂の上段の間は、床の間や書院しょいんなど立派りっぱなおやしきの客間きゃくまそのもので、お寺の本堂とは思えないつくりです。

 それもそのはず、ルソン(現在のフィリピン)との交易こうえき(品物の売買うりかい)をしていたルソン助左すけざ衛門えもんという大商人が、めずらしいつぼやかさなどを大名たちに高く買ってもらい、大金持ちになりました。それを豊臣とよとみひでよしににらまれたため、日本を去るときに、この寺にゆずった建物だからだと言われています。あまりに立派すぎる建物なので、「立派すぎるとねたまれる」と当時の堺の代官のまつ永久ながひさひでは、この本堂の柱に刀で切りつけて、きずをつけたとも言われているのです。このきずは現在でも見ることができます。

 このお寺のふすまや板戸にえがかれた絵もみごとなものです。襖絵ふすまえとよばれています。二六羽のツルの絵、フジやサルやヒノキの絵など、構図こうずもみごとな絵をえがいています。さらに、「えだえの松」とよばれている絵には、こういう話がのこされています。

枝添えの松

 有名な狩野派かのうは絵師えしが、この寺で松の絵をかいて江戸に向かったところ、鳴海なるみという現在の名古屋市なごやし付近で松を見て、一枝かきわすれていることに気付きました。そこで大安寺に引き返して小枝をかいて、ふたたび江戸に向かったというのです。そこから「枝添えの松」とよばれているのです。かつての国語の教科書にもこの話が「苦心くしん絵師えし」としてのっていたそうです。

 庭には、利休好みのにじ手水ちょうずばちとよばれている石の鉢がかれています。手水鉢の外側の石が虹のようにかがやく石をちりばめているところからそうよばれているのです。

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