田原 嘉明 7

第7回 新刊算法起を読む:6

 では、早速、前回の池の水の体積を求めましょうか。 まずは、問題文の現代語訳から

解説と解法

 これは、それほど解説は必要ないかと思います。まず、池の幅です。

 図からすると、
   東の長さ:150間   西の長さ:110間
   北の長さ:165間   南の長さ:130間
文にもどって、東西の合わせた長さは260間なので、平均130間です。
南北の合わせた長さは、295間なので、平均147間5分です。この2つをかけます。
   130×147.5=19175間
            =19175坪

 つまり、たて147.5間、横130間の長方形の面積を求めています。元の不等辺四角形の池の形を、右の長方形の形と見なして面積も同じだと考えたのですね。したがってこの19175坪がこの池の表面積と考えています。ここまでが、①にあたります。

 次は②です。「水坪」、つまり「水の体積」、池からすると
この池の容積を求めます。そのために、水の深さを知る必要があります。
   樋の深さ(ア):1丈   中の深さ(イ):6尺
   南の深さ(ウ):5尺  なので、この東側の3か所の深さの平均を求めます。
   (1+0.6+0.5)÷3=0.7丈=7尺
次に西側の3か所の深さを求めます。
   北の深さ(エ):4尺   中の深さ(オ):3尺
   南の深さ(カ):2尺  なので、同様に平均を求めると、
   (4+3+2)÷3=3尺
この東側と西側の平均値を合わせて2で割って、この池全体の深さの平均を求めます。
   (7+3)÷2=5尺=0.5丈
これを間の単位に直すために、0.65をかけます。
   0.5×0.65=0.76923・・・
           ≒0.7692(間)
これで池の深さの平均が出ました。ただし、現代の算数・数学からすると、これで本当に池の深さの平均となるのかが問題となりますが、池の見なした形と同様に、池のふかさも江戸時代では、およその値が分かればよしとしていたのでしょう。また、ここまでの数値が出ることがすごいことだったかもしれません。さらに、季節によっても池の深さは変わりますので、厳密な数値を求める必要はなかったことも考えられます。で、ここまでが②です。

 つづいて③。いよいよこの池の水の体積を求めます。
表面積×深さで体積が出ますね。
   19175×0.7692=14749.41
               ≒14750(坪)

 見事、この池の水の体積が分かりました。
では、この続きの原文です。なかなか終わりませんよ。

解説と解法

 まず①です。ここは、堤の体積を知るための解き方を示しています。

 「ね置何間、上口何間」とありますが、「ね置注7-1」というのは、本人の立っているところから見て、池の表面の下底にあたる辺の長さで、「上口注7-2」というのは、池の上底にあたる辺の長さのことでしょう。この上口とね置とを合わせて2で割るのですから、まさに台形状の四角形の池の表面積(青色の部分)を求めています。ただ原文を見ると、この「2で割る」ことが書かれていません。台形の面積を求めているのですから、おそらく田原氏が書き忘れたものと思われます。

 そして、これに高さ(深さ)をかけますので、当然、堤の体積が分かるということを説明しています。所謂、一般化を図っているのですね。

 次に②です。
 ここでは、古い堤でも、修繕工事をしていても長さが分かるので、間(けん)を0.65で割って尺を求めます(0.65というのは、何度も出てきていますが、1尺は0.65間だからです)。面積や体積を求めるには、単位を間ではなく尺で表さないといけないからです。そして、表面積に高さをかけると体積が出ますね(単位は坪です)。

 この計算方法は、水坪を求めるのか平坪を求めるのかさえ意識していれば使えますよと、いうことです。ここでいう「水坪」とは水の体積のことで、「平坪」というのは水の表面積のことです。その後に「田の薄割(うすざき)」とありますが、これは田の表面のことです。この場合も「平坪」といいます。さらに「本坪」というのもあり、これは「栗石」「土」「水」など立体物のことをいうということが書かれています。このように、土木工事や検地などで使われる用語の解説までしているのです。

 最後の③です。
 6尺5寸四方といいますから、1間四方の土地のことですね。この場合は「平坪」とも書かれていますので立体の表面をイメージする方がいいかもしれません。これに高さ6尺5寸をかけるのですから、まさに1辺が1間の立方体です。本文では「1尺四方六面」という表現ですが、1尺四方の正方形が6面ある、つまり1辺が1尺の立方体ということになります。

 体積を求めるのですから、6尺5寸を3乗します。
   6,5×6.5×6.5=274.625(尺
              ≒275尺

 このようにして、立体の体積を求めればいいと書いています。そして、土・水などの本坪(体積)の場合は、上の275尺にさらにちりが入って積もる、石・水の場合でも細かな砂が積もって、升が微妙に変化することがある。全て見計らいが大事だと言っています。

 後の歌は、これらのことを歌っているのです。 

 この第12の問題はもう少し続きます。

解説と解法

 先に、池の水の体積は、14750坪と分かっています。1枚の田に35坪の水を入れるのですから、水全体の体積を1枚の水の体積で割れば、水の入る田の面積が分かります。
   14750÷35=421.42857・・・(反)
           ≒421.4(反)
           =42町1反4畝
と、水の嵩がでました。

 いよいよこの第12問の最後です。

 池の水積の最後の問題です。
さあ、この文を読み解いていただきましょう。これが今回の宿題です。

 解答は、次回に。

 

 

 

 

 

 

 

 

注7-1:ね置:台形の下底のことです。
「根置」つまり木の根のあるところです。

注7-2:上口:台形の上底のことです。

原書文